目次
DNA鑑定で親子は証明できる?
DNA親子鑑定、その目的と複雑な背景とは
目的は「親子関係の証明」その理由は様々
実は親に促される男性も
女性側にも事情はそれぞれ
精度が上がったDNA鑑定。1980年代の数億倍以上とも
過去には精度の低さから、犯罪事件で問題も
現代では飛躍的な進歩。21,000兆もの人を見分けることが可能!
DNA鑑定で父親であることの確率とは
親子関係を証明する父権肯定確率
DNA鑑定の正確性はかなり高いが注意も必要
DNA鑑定の精度を上げるためには
推奨されているサンプルを正しく保存し発送する
その他のサンプルでも鑑定は可能
鑑定は、信用できる検査機関へ頼みましょう
DNA鑑定で親子は証明できる?
DNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列の中には、一人ひとり違う配列パターンを持っている場所があります。このパターンの組み合わせが「DNA型」であり、DNA型を検査することを総じて「DNA型鑑定」と言います。その中でも、検査対象となる二者の間に親子の血縁が成立するかどうかを検査することを「DNA親子鑑定」と言います。 一卵性双生児を除き、この「DNA型」は個人ごとに違うため、DNA型鑑定は犯罪捜査などでは犯人を特定するのに有効な鑑定方法となっています。また、親から子へと引き継がれていく特徴もあるため、DNA親子鑑定をはじめとした血縁鑑定にも有効です。
DNA親子鑑定、その目的と複雑な背景とは
DNA親子鑑定が必要なときの目的には複雑な背景が絡んでいることがあります。
目的は「親子関係の証明」その理由は様々
DNA親子鑑定を行い親子関係の証明を必要とする背景には、以下のような複雑な事情を持っている場合があります。
- 夫が自分の子ではないと疑っているので証明したい。
- 養育している子は自分の子ではないかも…と悩んでいる。
- 関係を持った女性に子どもができたので「養育費が必要」と言われている。
- 夫の子ではなく結婚前に関係を持った男性の子かもしれない。
- 体外受精でできた子が取り違えられていないか証明したい。
- 離婚後300日問題のために生まれた子のDNA親子鑑定をしたい。
- 遺産相続のために親子関係を明確にしておきたい。
- 日本への入国に際して家族である証明になるDNA法的鑑定書が必要だ。
このような事情で悩んでいる場合には、DNA親子鑑定がその悩みを解決する有効な手段となります。
実は親に鑑定を促される男性も
DNA親子鑑定が必要なる理由は上記以外にもあります。たとえば、帰省などのタイミングで親から指摘されるケースです。異性関係が派手だったり水商売をしていたりするパートナーに子が生まれた場合、その子は本当に息子の子なのかを親が疑念を持ち、DNA親子鑑定を行うのです。
実子かどうかは遺産相続の場合に財産分与にも関わってきます。財産にもからむため事情は複雑であり、親子関係をDNA鑑定により明確にしておくことが大事です。
女性側にも事情はそれぞれ
男性側だけでなく、女性側にもDNA親子鑑定を受ける様々な事情があります。たとえば、自身では不貞行為を行ってきた事実があり、その後に生まれてきた子はパートナーや夫の子であるか否かを早めに確定しておきたいしておきたいという女性がいます。
また、不幸にも性被害にあった女性が妊娠をしてしまった場合、その妊娠中の中絶が可能な時期にDNA親子鑑定を行い、女性が妊娠を継続する判断材料に利用するといった活用方法もあります。
その事情は様々で、後々に問題が発覚するよりも事前にDNA鑑定で親子関係を確定しておいたほうが良いと言えるでしょう。
精度が上がったDNA鑑定。1980年代の数億倍以上とも
DNA親子鑑定を行うことを検討している人の中には、その鑑定結果が正確かどうか気になる人もいるでしょう。鑑定結果がその後の家庭環境や親子関係に大きな影響を与える可能性がありますので、正確性は大事だといえます。
たしかに、1980年代まではDNA鑑定の精度はそれほど高くありませんでした。しかし現代のDNA鑑定はその頃と比べると精度が数億倍以上も正確性が高まってきています。
過去には精度の低さから、犯罪事件で問題も
1980年代後半には犯罪捜査に使われるようになっていたDNA鑑定。ただその頃の精度はそれほど高くなく、犯罪事件によって犯人特定を誤る場合があるなどの問題が起こったこともありました。
有名なのが栃木県足利市で1990年5月に発生した足利事件です。渡良瀬川河川敷で女児の他殺体が発見された事件ですが、女児の下着に付着していた体液のDNA型がDNA鑑定の結果、菅家利和さんと判明し無期懲役の一審判決が下りました。
しかし2009年のこと、菅家さんの再審請求を受けてDNA型の再鑑定が決定。その結果、一審で証拠となったDNA鑑定が間違いと鑑定され、2010年には菅家さんに無罪が言い渡されました。
また1992年2月に発生した飯塚事件と呼ばれている幼児強姦殺人事件についても、逮捕された久間三千年氏は足利事件と同じ方法によるDNA鑑定により有罪が確定しました。1999年9月には死刑判決が下されましたが、2009年にはDNA再鑑定が行われました。二度の再審請求が行われ、現在審理中となっています。
このように、DNA鑑定がえん罪を生む可能性があることから、DNA鑑定は精度が低いと見られていたのです。
現代では飛躍的な進歩。2京(けい)1,000兆もの人を見分けることが可能!
DNA鑑定が犯罪捜査に活用されるようになり始めたのは1989年のことです。当時は1000人に1人の割合程度でしか人物を特定できないといった精度の低さでした。しかし現在ではその精度が数億倍以上も改善され、2京(けい)1,000兆もの人を見分けることが可能となっています。
DNA鑑定で父親であることの確率とは
DNA鑑定の結果で表される尤度比(ゆうどひ)や父権肯定確率などにより、父親であることの確率がわかります。
親子関係を証明する父権肯定確率
DNA親子鑑定は尤度比と呼ばれる数値で表されます。この数値は「2つの異なった仮説の下で同じ証拠に対する確率の比」であり、この数値と「DNA鑑定結果以外の点についての確率」である事前確率によって父権肯定確率が算出されます。
父権肯定確率とは、親子関係の確率ではなく鑑定の信頼度を示している用語のことです。ただ、DNA鑑定の結果以外も含めて考慮した確率である父権肯定確率が99.99%以上であれば、生物学的親子関係があることがほぼ間違いありません。
DNA鑑定の正確性はかなり高いが注意も必要
DNA鑑定の正確性は99.99%と非常に高いものですが、DNAのサンプルを採取して、そこから鑑定結果を出すには複雑な過程が生じます。そのため、ごく稀な例ではありますが、検体の取り違えといったヒューマンエラーが起こる可能性はあります。
DNA鑑定の精度は非常に高いものですが、100%の検査結果ではないことには注意が必要です。
DNA鑑定の精度を上げるためには
DNA鑑定の精度をより上げるためにはどうしたらいいのでしょうか。
推奨されているサンプルを正しく保存し発送する
第一は検査機関が推奨されているサンプルを提出することです。唾液や毛髪といったサンプルにもDNAは含まれています。ただし、唾液そのものには本人の細胞が含まれていないので正確ではありませんし、毛髪の場合は地肌から直接引き抜かないとDNA鑑定ができません。
また、ひげの剃りかすやへその緒でDNA鑑定ができると思うかも知れませんが、DNAの量が十分でなく正確な鑑定ができない場合があります。
そこで多くの検査機関では、口腔上皮細胞(口内の粘膜)をDNA鑑定のサンプルにすることをおすすめしています。口腔上皮細胞は「検体採取キット(医療用綿棒)」を使用して採取するもので痛みも出血もなく、もっとも正確な結果を出すことができます。妊娠中の女性でも鑑定精度は高くなっています。
その他のサンプルでも鑑定は可能
口腔上皮細胞を使用すればDNA鑑定の精度はほぼ100%です。ただその採取が難しい場合には、鑑定精度50%程度以上と落ちますが他のサンプルでもDNA鑑定は可能です。以下のようなサンプルの採取を試してみましょう。
- 使用済み歯ブラシ(10日以上使用しており使用後1~3ヵ月のもの)
- タバコの吸殻(口に直接触れるフィルター部分)
- 毛髪(引き抜いて毛根が付いた10本程度のもの)
- ひげの剃りかす(耳かき3杯分以上)
- 爪(最低片手分)
- 体液(付着したティッシュや下着など)
- 使用済みコンドーム
- 血液
- 着衣
※身体のどの細胞にもDNAは含まれています。
鑑定は、信用できる検査機関へ依頼しましょう
DNA鑑定の依頼は、かつてよりも簡単に行えるようになりました。DNA親子鑑定を行っても「血縁関係ナシ」という結果が出るのは2割程度となっています。ただ、その結果によっては、鑑定を行った人たちの今後の人生を大きく変える可能性もあります。
たとえ「血縁関係アリ」と判定されたとしても、親子関係を疑ったことに対する罪悪感を抱える人もいるかもしれません。また、「血縁関係ナシ」と判定された場合には、離婚のことや慰謝料・損害賠償のことについて話し合いをする必要が生じてきます。さらに、親子関係を解消するか否かの判断も求められます。
またDNA親子鑑定してはっきりさせることで、女性側が男性側よりも優位に立てる可能性もあります。
このようにDNA親子鑑定の結果は大事なものですので、正確な鑑定結果を得るために信用できる検査機関へ依頼しましょう。
【検査機関のチェックポイント】
- 日本に検査機関があり検査も行うなど、DNA鑑定結果の信憑性があるかどうか。
- 検査機関に専門家が在籍しているかどうか。
- 科学的根拠を持つ手法で鑑定を行っているかどうか。