目次
親の学力は子どもに遺伝する?
学力と遺伝の関係
子どもの学力は「環境」が左右する
なぜ、親の学力が遺伝すると言われるのか?
母親の学歴が子どもに遺伝する!?
親から子へ遺伝するもの
子どもの将来の可能性を知り、活かすために
環境を見直す
「子ども能力・感性遺伝子検査」をしてみる
この記事のまとめ
いつも上位に上げられる子育ての悩みとして、子どもの学力問題があります。その子どもの学力には遺伝が関係するのでしょうか。もし学力が遺伝で決まるのであれば、子どもの頭が良くなければ、なにをやっても学力は高くならないのでしょうか。そこで本記事では、子育て世代が抱える悩みや不安の大きな要素である「子どもの学力の遺伝」についてお答えしていきます。
親の学力は子どもに遺伝する?
メデイアなどで「親の学力は子どもに遺伝する」と言われることおありますが、実際にはその相関関係はどうなのでしょうか。それは半分正解であり、半分は間違っているといえます。双子を比較した研究によると、学力は遺伝するという結果が得られています。しかし、環境によって学力は変わっていくという研究結果もあり、学力は子どもに遺伝しますが家庭環境が学力を左右するとも言えるのです。
学力と遺伝の関係
慶應義塾大学文学部の安藤康教授が研究した結果、小学校の低学年では70%以上、高学年では65%程度が遺伝要素で学業成績が変わってくることが分かっています。
遺伝と学力の関係を調べるには遺伝的に近い双子を調査し、比較する実験を行うのです。そこで、遺伝が子どもの成長にどのくらい影響しているか調べていきます。その結果、この研究にかかわらず学力が遺伝する説の根拠となるものは、さまざまな研究結果でも分かっています。
親の働きかけにより、学習するようになる子どもはいます。それは家庭の環境ではなく、子ども自身の遺伝的傾向によって自発的に学習をし学力が伸びたともいえます。
もちろんこの結論は家庭や子どもの事情によって異なりますので、安易な一般論として遺伝の影響だけを取り上げられません。しかし安藤康教授のような行動遺伝学者としては、「学力への遺伝の影響の大きさのもつ意味もある」と言っています。
子どもの学力は「環境」が左右する
学力はもちろん遺伝だけでなく、本人の学習行動が直接関わってくることはいうまでもありません。また子どもの学力には家庭環境も大きく関わってきます。学力が高い層の親を持つ家庭では、テレビを見るときにもニュースやドキュメンタリー系の番組が多く、家庭でも新聞を購読しているので、日ごろから政治や経済、国際問題などの話題をすることが多くなります。また、子どもに対して本を買い与えられることも多く、日ごろから読書をするようになるのです。このような家庭環境を持つことで、自然と学力も高くなってくるのです。
このような家庭環境の影響は子どもが小さいほど受けやすくなります。子どもの年齢が低ければ低いほど、親に言われたとおりに学習や習い事をこなしていきますので、成績が伸びやすくなります。低学年の方が遺伝によって学業成績が変わってくるのは、遺伝に加えて、親に言われたとおり学習や習い事をすることも関わっているのかもしれません。
ただ家庭環境はすぐに変えることは難しいので、現実的な手段として塾に通わせることはいいかもしれません。その際には塾だけに頼るのだけでなく、親が家庭環境を変えていく努力をできるだけするようにすれば学力向上に繋がる可能性がたかくなります。
なぜ、親の学力が遺伝すると言われるのか?
ここまでで、遺伝と学力の関係を整理してきましたが、ななぜ、親の学力が遺伝すると言われているのでしょうか。親の学力が本当に子どもの学力に遺伝するのかを考えてみました。
母親の学歴が子どもに遺伝する!?
以前、テレビ番組で「子どもの学力は母親によって決まる」という驚くべき話題が取り上げられていたようです。この番組を受けて、「子どもの成績が良くないのは母親のせいだ」と断言しているサイトもありました。
この話題は文部科学省の調査結果をもとにしているそうです。中学3年生の数学の正答率を調査してみると、父親が高卒か大卒かによる正答率の差は12.4%だったのと比べて母親の正答率の差は16.7%でした。そこから導かれることとして、父親の学歴より母親の学歴の方が、子どもの学力に影響を与えやすいとなったのです。
父親から遺伝するのは、主に気分や本能をつかさどる脳の大脳辺縁系という部分に対して、母親から遺伝するのは主に記憶・思考・音声・知覚などの認識能力をつかさどる脳の大脳皮質。そこから子どもの能力は母親から受け継がれるという結論に達したのかもしれません。
しかし文部科学省の調査でも母親の遺伝情報が100%受け継ぐとはなっていません。この番組の内容だけで、学力の結果をすべて母親のせいにすべきではないと考えます。
親から子へ遺伝するもの
親から子どもが生まれた以上、親から子どもに遺伝するものは学力だけではありません。その他に主な項目として、以下のような遺伝内容が挙げられます。
1.顔・体
学力以外にも遺伝しやすいのは顔つきや体つきです。とくに骨格については最も遺伝の影響を受けやすくなっています。身体には骨格が関わりますので、声質や身長は親に似てきます。また顔や骨格に関連して、顔に表れるえくぼや髪のクセ毛は親から遺伝しやすくなります。
そのほか、DNAの染色体の関係で、男の子は顔や性格などが母親に似て、女の子の顔や性格などは父親に似ることがよくあります。
2.運動能力
親が高い運動能力を持っていると、子どもも運動が得意になる可能性が高くなっています。とくに瞬発力や持久力も親から遺伝することがあり、短距離走が得意な親から遺伝するのは瞬発力、長距離走が得意な親から遺伝するのは持久力であることもあります。
ちなみに、海外で行われた双子の研究では、親から運動能力が遺伝する確率は66%と言われています。
3.芸術的才能
音楽や芸術の才能も親から遺伝すると言われています。ミュージシャンからは音楽が得意な子どもが、アーティストからは図画や工作などが得意な子どもが生まれるかもしれないのです。
なお、行動遺伝学で双子を調べた研究での結果によると、音楽や芸術の才能の遺伝確率は50%程度となっています。
親から子どもへ遺伝する情報には、学力以外にもこのような項目が挙げられますが、これらを踏まえて子育てをしていくにはどうしたら良いのでしょうか。
子どもの将来の可能性を知り、活かすために
ここまでで、子どもの学力と遺伝の関係を中心に見てきました。そこで、子どもの可能性を知り、かつそれを活かしながら伸ばしていくためにはなにをしたらいいのでしょうか。子育てに悩みや不安を抱える世代にとってしなければいけないことは遺伝だけにとらわれないことです。
環境を見直す
子どもの学力に不安がある場合にはまず、子どもが育つ環境を見つめ直してみましょう。子どもが集中できる環境を用意することで学習がうまくはかどれるようになり学力が向上します。
その際、子どもによって、親がいるリビングのような環境で学習する子どもや、1人で集中しないと勉強が続かない子どもなど、さまざまなタイプがいます。そこでどこで勉強するのが良いのか、子どもと一緒に今一度、考え直してみましょう。
併せて、親は子どもが自発的に勉強するような声がけするほか、子どもの好奇心を満たしてあげる勉強方法を与えてあげることも大事です。
「子ども能力・感性遺伝子検査」をしてみる
遺伝子学的に、子どもの能力や感性を分析することもおすすめです。子どもの“能力・感性”遺伝子を検査するキット「iGENO(アイジーノ)」は、子どもの「得意なこと」「苦手なこと」を把握することで長所を伸ばし、短所をカバーすることで、子どもの未来の可能性がより広げていくものです。
特に子どもの幼少期は親も子ども自身も「何が得意か?何が苦手なのか?」が把握しづらいものです。そこで遺伝子検査を行うことで、遺伝的な傾向からその子の持つ可能性を見ることができます。
子どもの将来の可能性を出生前や出生後に知るには、身体的な特徴や遺伝的疾患など、遺伝情報のあるDNAを調べる「遺伝子鑑定」のような方法もありますので、参考にしてみてください。
この記事のまとめ
「親の学力は子どもに遺伝する」と言われていますが、それは半分正解であり遺伝要素により学業成績も変わっていくことがあります。ただし子どもの学力は遺伝だけではなく、「環境」にも左右されるものです。子どもの学力を伸ばすためにも遺伝情報だけで一喜一憂せずに、子どもの学習環境を見直してみるようにしましょう。